翼に ―大切な敵―





「ねえ、人に聞いといて自分は言わない気?」


「……馬鹿にしてんのか」


「馬鹿にしてるように見える?」



「あぁ」



「なら、謝る。馬鹿にしてないよ。名前を教えて?」


包み込むように今度は優しく穏やかに聞く。



「…北條祐介」



「……きた…しのゆう…すけ……?」



「?」



目を見開いて驚く逢沢奏。
今度はなんだ。



「でかく、なったな……」


微かだが、そういった気がした。
逢沢奏の顔は青ざめているのでは無く、暗く荒んだ顔だった。



「は?」



祐介さんは聞こえなかったらしい。



「いいや、なんでもない。祐介ね、宜しく。他の人はー?」



「力谷宗」


「片岡漸」



「宗と漸ね。宜しく。んじゃあ、あたしは失礼する」



そう言って走っていった。