あの日のことは忘れなきゃ。

お母さんがきっと悲しむから・・・

忘れなきゃ・・・。


って、、、早く帰らなきゃ!

私は急ぎ足で屋敷に戻った。


はぁ。はぁ。はぁ。

どれくらい走っただろうか。多分、3分くらいだとは思うけど、いつも部屋に閉じこもっている私にとってはキツイ・・・。

週に3日、剣道と空手のお稽古があるけどそれ以外の運動は全くやっていない。おかげで、走るのだけは凄く遅い。

っていうことは、実際はどうでもいいんだけど。

だって、走ることなんて滅多にないしどうせ、来月には婚約者の桐生さんと同居・・・。結婚なんてしたくないけどお母様の為にも跡継ぎは必要だし・・・。


これも、仕方ないよね。

はぁ・・・。


私は無意識に溜息をついた口を急いで塞いだ。

「溜息なんて、桐生さんにもお母様にも失礼な事を・・・。」


私がもっとちゃんとしなきゃ。


トボトボと歩いていると、いつの間にか屋敷の目の前についた。玄関口から入ると脱走してきたことがばれちゃうから・・・(お母様にはばれてると思うけど)裏口から入るか。


そっと、裏口に回って扉に手をかけようと・・・・・ガスッ!!!

後ろに人の気配がして私は右に移動した。

音のした方をみると体格のいいオジサン2人組みが私に向かって棒のようなものを振り下げていた。


「え・・・。」


そういえば、お母様が昔言っていた気がする。私の家系は狙われやすいって・・・。財産目当てがほとんどらしいけど。

きっと、この人達もお金が目的。


だとしたら、早く逃げないと。

幸いなことに此処は屋敷の真後ろ。きっと、今叫べば、使用人の誰か1人くらいは気付いてくれるはず。

『あ、、、でもだめだ。こうなったのは自分が屋敷を脱走したせいなんだから自分でどうにかしないと・・・。』


た、倒すしかないんかな・・・?