「それより、なんで名前知ってるんですか?」
さっきから、悠ちゃん悠ちゃんって。
私はこの人に会ったことないし、ましてや自己紹介なんてした覚えもない。
怪しみを込めた顔で見つめる私に、
「あははっ、別にストーカーとかじゃないから。これこれ。」
彼は笑いながら、私の名前が書いてある数学の教科書を手に取った。
「あ!言い忘れてたけど、俺は2年の河野 絢斗。よろしくね~」
河野絢斗……こうの、しゅんと……
ああ、これまたイケメンで有名なあの河野先輩か!
真田先輩と河野先輩は、この学校でかなり有名な人。
まあ確かに、顔立ちがいいから女子が黙ってないだろうけど。
ジーっと河野先輩の顔を見ながら、そんなことを呑気に考えてみる。
「なになに?そんなに俺のこと見つめて。見惚れてた?」
「まさか!違いますよ!」
凄い勢いで否定した私に、河野先輩はケラケラ笑っていて、
「うわー、即答?酷いなあ。俺、傷ついちゃうよ」
なんて言っている。
そうは言っても、河野先輩は相変わらず笑っているし、
「…少しも傷ついているように見えませんよ」
逆に何か楽しそうな顔をしてる。
