脚が弾むように歩いていると、後ろから追い抜くグループの話し声が耳に入ってきた。


「さっきの、沙由奈だった?」

「防波堤に座ってたの?」


「やっぱそうだよね。私も沙由奈っぽいなぁって思った」



沙由奈が?


防波堤?


パッと芽衣を見ると、真紗希の視線も芽衣へと向いていた。


「あ...沙由奈ちゃんのとこ行かなきゃ」


そう言い終わらないうちに芽衣が1番に走り出し、その後ろを私と真紗希が追って走った。


息切れを深呼吸で整えながら、目で紗由奈を探した。

同じ方向で、3人の動きが止まった。


防波堤の上。


うちの学校の制服を着た女の子が1人座ってる。

間違いなく沙由奈だ。


近づくと、沙由奈は顔をこっちに向けて眉をひそめた。


威嚇というよりも少しおびえているようにも見えた。


「な、何よ。まだなんかあるの?」

強がってはいるけれど、声に強さがあまりない。


そういえばこの場所…格闘の末、海に落ちた所だ。


「沙由奈、学校行かないの?」


最初に、真紗希が芽衣の前に立ち沙由奈に聞いた。



小さく笑った紗由奈は、


「行けるわけない…今さらどの面下げていけばいいんだよ。真紗希はうまく逃げれていいね」

視線は海の方へ向けてそう言った。

沙由奈は、少しやせたように感じた。


真紗希は一歩前に出て、

「逃げてんの、沙由奈じゃん」

紗由奈をじっと見た。


紗由奈は微動だにしなかった。


真紗希は、ふうっと息を吸い込んで続ける。

「私達は自分がしてきたことの責任取らなきゃならない。こうなったのも、当然だと思う。歩成が止めてくれなかったら、私達はどこまでも落ちてたと思う…人として最低な戻れなくなる所まで」


真紗希が沙由奈にこんな風に話すのは初めて聞いた。


「芽衣が悪いわけじゃないのわかってるんでしょ、本当は。沙由奈を止められなかった私が悪い…沙由奈が何もかもを芽衣のせいにしたのが悪い…そうでしょ?」


涙声だけど、はきはきと真紗希は沙由奈に問いかける。



紗由奈は小さな声で、弱々しい口調で話し始めた。


「神様は不公平だよね。芽衣は私の持ってないものばかり持ってて。何の努力もしなくてもいいんだから」


沙由奈の言葉に芽衣がビクッとなる。


紗由奈を少しおびえた瞳で芽衣は見つめる。


「私は自分の顔が嫌い。キツイ顏で気が強そうに思われて…」


芽衣は恐る恐る沙由奈に近づいた。