「パパ、ママごめんなさい…サヨナラ」


サヨナラ…?


そろそろ幽霊ではなさそうなことはわかってきた。


飛び込み?

と、頭によぎった瞬間、女の子は海へと向かって倒れるように飛び込んだ。


胸が大きくドクンと鳴った。


とっさに腕を伸ばして抱き抱えた。


小柄とはいえ大人の女。


「うわっ」

抱き抱えたまま後ろにひっくり返った。


「痛っ…」


頭と肩、肘に痛みを感じる。


コンクリートの地面で肘を擦りむいたような気がする。


「え?え?」

ガバッと起き上がって辺りを見回す女の人…

「ちょっ…と、重っ」


私の上に乗ったままあたふたしている女の人はパッとこっちを見ると、

「キャッ。ごめんなさい…あ、あの…」

深々と頭を下げてきた。



この人、今、絶対飛び込もうとしてた。


死ぬ…つもりだったのかな。