モモとウメと君と








翌日、私は橘くんに愛目ちゃんとはどんな関係なのか訊くことにした。


「た、橘くん……」

「ん?」



ギロッ……


こちらに振り向く橘くん。

相変わらず目つきは悪いけど、私はもう慣れたかな。



「あのね、昨日のあの愛目ちゃんって子…………橘くんの彼女、なの……?」


「ははっ。違うよ。愛目は保育園のときからの腐れ縁でさ。よく誤解されるけど、彼女じゃない」


「そ、そうなんだ……」



ほっ……。なんだ、彼女じゃなかったんだ。
よかったあ…………




って!!なんで安心しているんだろう!?


別に彼女とかどうでもいいじゃん?
橘くんが好きとかそんなんじゃないし……




ドキッ……





ん?

なんだ、この胸の高鳴り……。







ドキッ……ドキッ……





止まらないよ、どうしよう。





……もしかして私、橘くんのこと………………












…………好き、なのかな。




好きって……こういうことなのかな。

恋って、こんなに胸がきゅんってすることなのかな。





その日から私は、勝手に橘くんを意識してしまい、無意識に避けていた。


必要以上の会話もない。

フラワーガーデンには、あの日から1度も行っていない。




ほんとバカだね、私は。



愛目ちゃんと橘くんは、今この時も楽しくやっているんだと思うと、悲しくなる。



きっと、愛目ちゃんは…………橘くんが好きだと思う。



あの日のあの目が、それを物語っている。


『邪魔しないで』



2人は何年間も、ずっと一緒にいたんだ。

愛目ちゃんにとって、私が橘くんを好きでいるなら、邪魔者でしかない。


敵意むきだしの愛目ちゃんに、私は勝ち目無しだよ。



それに、橘くんだって、急にノコノコ現れたチビの私よりも、昔からよく知っていて可愛い幼なじみのほうが、好きになるに決まっている。