モモとウメと君と







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数日後の放課後。
今日は部活が休みの日。


だから私は、橘くんと出会った場所……フラワーガーデンにいた。





「この花は、ガーベラっていうんだ」

「あっ、これは知ってる。可愛い花だよね!」

「うん。キク科のガーベラ属で、花言葉は『希望』」

「へえ〜。希望、かあ……」



橘くんには、ヒミツがあった。

『花が好き』という、見た目からは想像すらつかない趣味。


本人は、ヒミツじゃなくてみんなが知らないだけ、と言うが、私はこれを“私だけが知っているヒミツ”としておきたい。


栽培委員会に入って、毎日ここで花の手入れや水やりをしているらしい。




…………正直、意外だった。


こんな目つきが悪いから、もっともっと冷たい人だと思っていたのに。

橘くんの、花を見つめる視線は…………すごく、優しいものだった。


人を見た目で判断しちゃいけない。

見た目で判断されることはすごく嫌なことだって、わかっているはずなのに。




そんな橘くんは、花について物凄く詳しくて、私がこの花は何ていうのと訊くと、嬉しそうに答えてくれる。



「……橘くん、これは?」

「あ、それは……『モモ』だよ。もうすぐ実になるものもあるけど……」

「え?モモ?私の名前と同じだ〜!実になるって、あの果物の桃のこと?」

「うん。だけど……実になる前に枯れてしまうことが多くてさ。栽培が難しいんだ」



そう言うと、橘くんは悲しそうな顔をしてモモの花にそっと触れた。


モモの花に向けられたその瞳が、ごめんね、と言っているようにみえる。



橘くん、ほんとに花が好きなんだ……。