「ごめんなさい!大丈夫ですか!?」


どうやら人がいると気づかずに、ホースの栓を開けたらしい。


私もバカなもので、ホースを踏んで通り過ぎようとした。


それと同じタイミングでホースの栓を開けてしまったため、水が噴射してしまったようだ。


あちゃー。

靴が少し濡れちゃった。



「こ、これ使ってください」


立ち尽くす私のもとに、男の人が走ってきてタオルを差し出す。



「あ……ありがとうございます」


顔を上げてそう言うと、その男の人は私の顔を見るなり目を丸くした。


私も目を丸くした。



「立花、さん……」


「あっ貴方は隣の席の橘弘也ね!? 初対面早々私を睨んだ! …………はっ!」


「……え……」


し、しまったあ!!
ついつい悪態をついてしまった!


どうしよう、この人怒らせたら
絶対ヤバいよね……。

あんな目つき悪いし、身長高いし、ど迫力満載だし……!!


も、もしや不良だったりして!?

だって今、水で何かしようとしていたわけだし!?悪ふざけとか!


間違いない、この人不良だわ!!





「ちょ、ちょっと待ってよ。そんなに離れなくても」


「え?」


気がつくと、私は無意識に橘くんから3メートルくらい距離をとっていた。



「あ……すいません!そんなつもりはなくて、その……勝手に体が?みたいな!ははは、そうそう勝手に動き出して…………」



ちらっと橘くんを見ると、眉をひそめてこちらをギロッと睨んでいる。


「ひ、ひいっ……!」


「あのー、俺さ……」



橘くんがギリッと距離を詰めようとすると、私は思わずあとざすりしていた。





「……やっぱり、怖がられちゃうんだ」




「…………へ?」




怖がられちゃう……?

は、はじめから、怖がらしているんじゃないの……?



「何か勘違いしているみたいだけど、俺さ、睨んでないから」


「へ?に、睨んでないって……」


「だーかーら、入学式のあとのホームルームで、自己紹介したときでしょ?俺、生まれつきこんな目つきしてるんだ。だからよく睨んでるって思われるけど……別にそんな意識ないし、ただ見ただけって感覚」


「…………」



そ、そーなんだ…………。

てことは別にこの人、不良とか何とかではないわけですね?

安心していいんですね?


ただ、目つきが悪いだけ……なのか。



というより、不良とか悪ふざけとか変な妄想をしてしまった私の頭は、安心できないですね。はい。



「そんなことより、立花さん大丈夫?足元濡れちゃったし……」


「あっ、別に気にしないで!それより橘くん、水なんて出して何してたの?」


「そ、それは……」