「いく、わよっ!」

さらに操縦桿を引き絞り、私と彼は、上下逆さまになった。

頭上と言えるのかわからないが、遥か先に空ではなく海の蒼さを眺める。

私はレバーの頭についているスイッチに、親指をかけた。

ズダダダダダダッ! と、彼が吠える。


彼の咆哮を受け、空で、花がひとつ、咲いた。

真っ黒い花粉を散らす、赤い華だ。

「あと二機!」

ひねりを加え、上下を正位置に戻した時には、さすがに連中も旋回している。

機首がまっすぐに私達を見つめ、閃光がまばたきしてきた。

即座に、私は踊る。体を横に、縦に、上下左右へ動きながら、回転する。

ヤツらの銃弾は、私に当たることはなかった。

が、ヤツらの一機は、私とすれ違った瞬間に、爆ぜた。

彼が鉛弾をプレゼントしてやったのだ。さすが私の相棒。

さあこれで残るは一機。

のはずが、今しがたすれ違った機体が、見当たらない。