蛍と光


「何て言われたの?教えてよ、光」



こっちを見ずにどんどん先に進む光を追い掛ける。


でも足の長さの違いで私は駆け足になってしまう。



いくら待ってって言っても待ってくれないし。



家に着いた時には汗だく。



「はぁ、はぁ。光…速いよ。汗掻いた。ちょっと着替えてくる」



『英語の教科書と参考書、持って来い』



「分かったよ。でも一体何を言われたか教えてよね」



着替えて光の部屋に入ると、光も着替えていた。


雨は降っていないけど、梅雨のジメジメしている時期にあれだけ早歩きすればそりゃ汗掻くよ。


図らずとも中学のジャージというお揃いの格好になったのには笑えるけど。



「で、先生は何て言ったの?」



ローテーブルに向かい合わせに腰掛けたのと同時に切り出す。



『その前に聞いていい?』



「何?」



『蛍は新山先生が付き合ってって言ったら付き合う?』