蛍と光


新山先生の英語の授業に身が入らないのはいつもの事だけど、その日は先生と目が合う事も多く、余計に授業に集中出来なかった。



「はあ」



「蛍。ため息吐くと幸せ逃げるよ」



「うん」


分かってる。


でもため息が出ちゃう。



「購買行ってくるけど気分転換に蛍も行く?」



動く気力があまりなくて、大丈夫と言うとユカは席を立ち、教室を出て行った。



その隙に現れたのはマネージャーさん。


ユカの席に着くなり


「青柳さんと新山先生ってどういう関係なの?先生が言っていたのは本当?長岡くんの事、本当に好きじゃないの?」



と聞いてきた。



答えを聞かないと気が済まないっぽい。



「…新山先生が言った通りだよ」



「それは彼氏は作らないってこと?」



「そう。勉強大事だし。それに傷付けたくないし、傷付きたくないから」



これはユカにも伝えた。


それに至った経緯までは話せなかったけど。



「じゃあさ、もう少し目立つのを控えた方がいいと思う」



「えっと…それはどういう意味?」



「青柳さんの事を好きな男子の事を好きな子もいるって意味だよ」



なるほど。


それが言いたかったのか。


マネージャーさんのように長岡くんを好きな子を傷付けるなと。


そんな事言われなくても分かってるよ。



「それで?」



「学祭。きっと青柳さん目当てでお客さんが来ると思う。でもその中に誰かの好きな人がいたら傷付くでしょ?」