蛍と光


「そうだ。光」



『ん?』



「聞いたよ。いいクラスで良かったね」



一瞬、驚いたように目を見開いたけど、すぐにはにかむような笑顔で小さく頷いた光を見て私も嬉しくなる。



この顔。


幼い頃から変わらないこの笑顔が可愛くて一番好き。


笑顔が戻ってくれて本当に良かった。



「あ、教科書。あとで返しに家に寄るけど光は今日、予備校何時に終わ…」



「おーい!青柳!そこで何、青春しているんだ!早く来いっ!この0点女子がっ!」



光と会話をしている途中なのに、廊下の端から叫んできたのはイケメン白衣教師の新山先生。



教科書を丸めてメガホンみたいにしてるからすごく声が響いてる。



ていうか『0点女子』とか言うかな。


同級生でごった返している場所で。



視線が一気に集まっているのが光の背後に隠れても感じられる。



他クラスの同級生はまだ知らない人の方が多いのに。