「離して!降ろして!卒業式最後までちゃんと出席しようよ!」
「卒業式はあと校長の長い挨拶で終わりだよ」
「それでもユカとか長岡くんとか山田くんと一緒にいたいよ」
「分かったよ。でももう絶対に離さないから。覚悟しておけよ」
「覚悟って…春からは離れ離れなのに」
「同じ学校に行くのに?」
「え?」
「学部は違うけど同じ大学だ」
「本当に?!」
「本当」
「やっぱり夢なのかな」
「夢じゃないって。夢だったら俺の方がショックだわ」
その光の言葉がおかしくてフフッと笑うと光は顔を赤くした。
「その顔。好きだよ」
「ばっ…恥ずかしいこと言うなよ!」
「照れてる。かわいいね、光」
「むかつく」
そう言うと光は私を桜の木の下に降ろし、私が見上げた瞬間、キスをした。
「蛍の赤面。かわいいな」
「なっ!?馬鹿じゃないの?!」
「お互い様だろ」
余裕そうに笑う光がにくたらしくて、ぷうっと頬を膨らまして抗議すると、いつかのように指で突かれて頬の中の空気が『ブフゥ』と音を立てて出た。
「これからもよろしくな」
「こちらこそ」
「姉ちゃんの分まで幸せになろうな」
「うん」