壇上に置かれている原稿とマイク。
そのマイクに音が乗らないよう静かに深呼吸してから、手を伸ばす。
そして手を顔の前まで挙げ、
「本日は私達卒業生のためにこのような盛大な式典を挙行していただき、誠に有り難うございます。
また、ご多忙の中、ご出席くださった来賓の皆様、校長先生をはじめ諸先生方、並びに関係者の皆様に、卒業生一同心からお礼申し上げます」
と言う言葉と同時に
『突然、ごめんなさい。
手話が分かる人には言葉と違う手話だと気付くでしょう。
でもどうしても最後に伝えたいたい事があるんです。
それは本当に個人的な事。
面と向かって言えないから、この場を借りて伝えます。
私には好きな人がいます。
幼いころからずっとあなたが好きでした。
あなたに好きな人が他にいようとも』
光の方を向いてそう手を動かした直後、突然体育館の照明が落ちた。