なぞなぞみたいな先生の餞の言葉を胸に、私は背筋を伸ばし、壇上へと続く階段を昇る。
「卒業生答辞 青柳蛍」
この場所は誰にも渡すつもりはなかった。
ここで読む文書なんかありきたりな文章を読むだけだけど、私にはここでやるべき事がある。
医者になるって決めた時、新山先生の告白を断った時、卒業式で光に気持ちを伝えようって決心したんだ。
わざわざみんなの前で告白する必要はないけど、私が告白して、それを断られてもちゃんと生きていられるんだ、って光に見せてあげたいから。
そのために必死に練習した。
話す言葉と違う手話をするのはすごく難しい。
でも言葉じゃなくて、手話を使ってこそ伝えられる想いがある。
ここは光と一緒に立った思い出の場所だから。