「蛍火を以って須弥を焼く。これはな微力を持って大きな事をやり遂げる事の喩えだ」
微力を持って大きな事をやり遂げる。
医者になり…俺の声を…?
「何を勘違いしてんのか知らねーが、あいつはちゃんと前を向いている。強い想いを込めて」
そういえば母さんが、蛍が俺とは別の予備校の夏期講習に行くらしい、って言っていた。
あの時は友達にでも誘われたんだろ、くらいにしか思っていなかったけど、医学部に通う為だなんて思いもよらなかった。
心が張り裂けそうだ。
俺は蛍の何を見ていたんだ。
やはりちゃんと伝えるべきだった。
同じ苦しみを味わうなら。
学祭の薔薇に蛍へのメッセージを秘めるんじゃなくてちゃんと言葉で。