ただ蛍二十日に蝉三日はなんとなくだけど命が短いって意味じゃないのかと思う。
命を大切にしろ、って意味。
それならちゃんと分かってる。
親を悲しませるのは姉だけで十分だ。
「おお。さすがに分かっているみたいだな」
表情だけで通じるほど先生との関係は深くないはずだけど、分かって貰えるならそれに越した事はない。
早く出て行ってくれ、と今度はあからさまに訴える。
「まぁまぁ、そう邪険にするな。いいか、念のためお前に関する事を教えるとだな、水に燃えたつ蛍は会えなくて苛立ち焦がれる様を言う」
蛍の気持ちを得た先生にだけは言われたくない。
俺の失恋を馬鹿にしに来たのか。
「羨ましいよ」
それが馬鹿にしてるって言うんだ。
ほんと、帰ってくれよ。
「待て待て。蛍二十日に蝉三日に関してだけどな、これは物事の盛りは短いって意味なんだ。花盛り、食べ盛り、働き盛り、女盛り、男盛り。勢いのある時期は短い」


