「水城ー」
俺を呼ぶ先生の声にさえ、怒りを覚える。
蛍に愛を囁くその口から俺の名を呼んで欲しくない。
聞きたくない。
何も。
2人の幸せなんか知りたくもない。
「水城。別によ、耳塞いでもいいから聞けよ」
馬鹿でかい声だ。
耳を塞いでも聞こえる。
いいよ、もう。
聞いてやるからさっさと話せ。
耳を押さえていた手を放し、先生に話すよう促す。
すると真剣な表情で俺の目線と合わせるように屈んできた。
「お前に蛍の諺を4つ教えてやる」
蛍の諺だと?
急になんだよ。
国語の教師でもないくせに。
「いいか。①蛍火を以って須弥を焼く②蛍二十日に蝉三日③鳴く蝉よりも鳴かぬ蛍が身を焦がす④水に燃えたつ蛍」
勝手に話すなよ。
しかも訳わからない蛍の諺なんか持ち出して。
当て付けか?
何が言いたい?
「今のお前は4番だ。そしてあいつは1番。共通項は2番。それぞれの意味は分かるか?」
分からない。