「水城ー!」
またか。
見た目は3枚目を気取るくせに実は熱血教師の新山先生が俺を呼んでいる。
今、1番見たくない顔なのに成績が落ち、クラス内に溶け込もうとしない俺を気にしているらしい。
小学校や中学校じゃあるまいし、家にまで来るとかほんと、有り得ない。
「お前、やる気あんのか、コラっ!」
やる気?
そんなのある訳ないだろ。
今までの生活から思いっきり変わってしまったんだ。
朝は一人で学校に行き、家に帰っても一人で過ごす。
プライベートな会話をする事はないし、手話もほとんどしない。
朝昼夜
朝昼夜と
無限に続く1日の繰り返し。
それは当たり前の事なのに、その当たり前が鬱陶しい。
親に心配掛けないために学校には行かなければならないけど、朝が来て学校に行くのも、夕方まで勉強するのも、夜寝るのも、三食腹に入れるのも正直全部、面倒くさい。
蛍のいない世界なんて俺には何の意味もない。