彼女を知ったのは入学式だった。


新入生代表の挨拶として壇上に立った彼女に目を奪われた。



『あの綺麗な子が首席?!』
『首席、美人じゃね?』
『天は二物を与えるのか!』



両隣の席は他校の生徒で、その日初めて会ったのにも関わらず壇上の女の子を見て思わず出てしまった独り言の内容が被った。


それに苦笑いで互いに応えると



『あれ?もう1人上がって行ったぞ?』



周りのざわつきに乗じて聞こえたその声に、前に座る同級生の間から見てみると壇上へと続く階段を明らかに頭の良さそうな男が昇っているのが見えた。



そして女の子の隣に立った。



『首席が2人?』

『どういうこと?』



一斉に騒がしくなる場内。



それは新入生だけでなく、在校生たちも同じで、『静かにするように』という先生方からの大きな声でよくやく静かになったけど、女の子が話し始めた途端、またざわつき始めた。


『え?なに?手話?』

『あの子は通訳なの?』


そのざわつき通り、男が手話をし、女の子が通訳をしている。


なんだあれ。


でも目が離せない。


挨拶自体はいたって普通の挨拶なのに、いつの間にか会場内は静かになり、女の子の声に耳を傾けていた。



そして最後に2人で礼をし、隣の男に目配せしてニコッと笑った女の子に一瞬で心を奪われた。