ただ、約束を破り、先に帰った俺を蛍は心配して怒ってくれた。



だからまだ可能性はあると思っていたんだけど、『バイバイ』とはっきり突き離されてしまえば俺は元の俺に戻ってしまう。



放心状態の俺に。



「水城、本当にどうしたんだよ?具合悪いのか?」



悪いな、長岡。


心配されても俺はもう何も反応出来ない。


1人にして欲しいんだ。



「水城?」

「水城くん?」



心配そうに俺の名を呼びかけてくれる2人から顔を逸らし、その場を去ろうとした時、蛍が出て行った扉から山田が勢いよく入って来た。



「ぅおーーい!!水城に長岡ー!!」



「山田。騒がしいな。今はお前に構ってる暇はない」



「いやいや、聞いて驚くなよ。俺、今、スゲーの見ちゃった!」



「何だよ」



「新山が青柳さんの事……お姫様抱っこしてた!」



なんだって…?



「なんでそんな事になるんだよ?」



「さあ?でも王子様とお姫様みたい、とか言って今、スゲー話題になってる。俺もあれ見たら諦めざる負えないよ。ドラマみたいだった」



王子様とお姫様…?



「どこに行ったんだよ?」


「さあ?そこまでは知らねーよ。でも新山はなんか必死だったな」