「水城?おい、大丈夫か?おいっ!」
身体を揺すられた事により辛うじて我に返った俺の隣には、長岡と学祭の実行委員の女子がいた。
2人が心配そうに俺を見ている。
「放心状態だったけど」
放心状態?
それなら姉ちゃんがいなくなった日に初めてなった。
目の前で青ざめていく姉ちゃんが怖くて。
声の出ない自分が情けなくて。
どうしようもなくて。
でもそれを元の状態に戻してくれたのは蛍だ。
ずっとずっと俺の側にいて俺や俺の家族をゆっくり温めてくれた。
そのおかげで元に戻れたんだ。
笑うようになれた。
蛍の愛情を感じていた。
だからこそ蛍の側にいられるだけで俺は幸せだったのに、昨日、友達と話していた蛍は、俺への気持ちは同情だと肯定した。
ショックだった。
苦しくて、情けなくて、蛍の好意を勘違いしていた自分がどうしようもない人間に思えて、蛍と顔を合わせる事が出来なくなってしまい、その場から逃げた。