蛍が…


蛍が初めて俺に手を振った。



『バイバイ』って。



左右横に振るその手の動きはおそらく他の人からすれば何の意味も持たない。



普段目にする事の多い挨拶で使う仕草だし、無意識のうちに使っていると思うから。



手話でも『バイバイ』の意味でよく使う。



でも蛍は絶対に別れ際にあの仕草は使わなかった。



理由を聞けば『またね』『おやすみ』の方が未来があるからだと言う。



それがあえて手話で『バイバイ』と伝えてきた。



その意味するところは未来との決別。




思考も動作も全てがその場で停止した。