怖いんだろう。
姉と同じようになってしまうことが。
「水城は昨日、青柳がクラスメートに囲まれて話していた内容を廊下で聞いていた」
「え?」
それを俺は偶然目撃し、そして女子たちの騒がしい声を隣の教室で聞いていた。
盗み聞きなんて悪趣味だからしたくなかったけど、聞かずにいられなかった。
そして女子たちが帰ろうとした直前に、廊下を静かに駆けていく足音が聞こえたんだ。
「水城は勘違いしている。青柳の言葉を」
「蛍も勘違いしています」
「似た者同士なんだよな」
「2人はすれ違ったままなんでしょうか?」
「さあな」
どちらかが光らない限りこの答えは出ない。
「でも先生も本気でしょう?贖罪…ではないですよね?」
「フッ」
こいつ、すごいな。
そういえば美術の先生が青木の描く人物画は異様だって言っていた。
人間くさいって。
それに裏付けられていたのは並外れた人間観察能力か。
「違いますか?」
「フッ。俺はお前みたいに鋭いやつ、絶対に彼女にしたくないよ」