「怖かったんだ」
「何が?」
「あいつの想いにどう応えたらいいのか分からなかった」
そうなのかもしれない。
振られたことで自殺までする想いは尋常じゃない。
水城は水城を愛する人がどう思うか、考えていなかったんだ。
ただ1人しか見えてなかった。
しかもその1人さえ傷付けた。
家族はきっとそれ以上だろう。
「あそこにいるのが…水城の弟?」
動揺している弟を1人で行かす訳にはいかず、一緒に葬儀場に足を運んだ時、真っ先に目に飛び込んで来たのは水城とそっくりの男の子だった。
親を待っているのか入り口付近でぼんやり立っている。
その目には生気が宿っていない。
見るだけで心が痛む。
そんな感覚初めてだった。


