「ごめんね。蛍」
水城くんが蛍の事を嫌いなはずがない。
側にいて欲しいに決まってる。
そう言ってあげればよかった。
どこかですれ違っているだけだ、って。
そうでなければ昨日みたいに蛍を助けたりしないから。
本当は蛍に応援して欲しかったのに、わざわざ蛍を目の敵にするような女子の元に行くなんて、あんなの蛍を想っての愛情以外のなにものでもないのに。
蛍は勘違いしているだけ。
ただ、それを私から言うことが出来なかった。
2人には2人にしか分からない何かがあるって感じて、言うべきじゃないって思ってしまったから。
でもそれは私の悪い癖なのかもしれない。
蛍みたいに言葉にすれば良かった。
そしたら大事な友達がこんな風に苦しむことはなかった。
「ねぇ、蛍。蛍は今、何の夢を見てるの?」
眉間にシワを寄せて。
きっと嫌な夢だよね。
シワを寄せるのは考え事や悩み事をする時の癖だもんね。
「跡に残っちゃうよ」
指でグリグリっとシワを伸ばすと、眉間に寄っていたシワが少し取れた。