私を呼ぶ先生の柔らかい声に光が気付いた。
目が合う。
そしてこっちに来たけど、なんとなく視線を合わせにくくて、視線を光の手元にさりげなく移動する。
『来てたんだ』
「う、うん。でももう行く」
『そっか』
「あ!すごく良かったよ。モザイクアート。あとでユカが写真撮りに来ると思うからよろしくね」
『分かった』
「じゃあ…」
パシッ
「?!」
教室に戻ろうと光の横を通り過ぎようとした時、腕が掴まれた。
でももう光の目は見れない。
顔を見たら涙が出そうだったから。
「お願い。離して。私、もう戻らなきゃいけないの」
ここに私の居場所はない。
光の隣にはもう立てない。
私は必要ない。
それでも離してくれない光の腕を自らの手で取り、スルリと外す。
『バイバイ。光』
そう手話で挨拶して。
そして走る。
速く、速く。