頬に触れる先生の手をガシッと掴み、ポイと振り払う。
「先生のバカ」
「バカって…それよりお前…」
眉間に皺を寄せた先生が何かを言いかけた時、入り口の方から「水城くん!」という可愛い声が聞こえた。
その瞬間、ドクンと大きく脈打った心臓からドロリとした血が全身に巡った。
背後に光の存在を感じる。
振り向いちゃいけない。
でも振り向かずにはいられない。
その葛藤を繰り返し、ようやく気持ちを落ち着かせそっちの方にゆっくり振り向くと、声と同じくらい可愛らしい小柄で子猫みたいな女の子と一緒に光がいた。
「可愛い子…」
「ん?あー。アイツはうちのクラスの学祭の実行委員だ」
「そうなんだ」
言われてみれば手には何か書類みたいの持っている。
スケジュールでも確認してるのかもしれない。
光もそれを覗き込んで見てる。
だから私には気付いていない。
それなら出て行くのは今のうち。
ユカの事は廊下で待っていればいいし、よし。
出よう。


