蛍と光


「薔薇…」

教室の壁一面に貼られているのは大きな一輪の赤い薔薇だ。



その周りを白を基調とした淡い色が囲み、神々しさを醸し出している。



その荘厳さに息を飲む。



「これ…写真なんだよね?」



「近付いてみようか」



ゆっくり絵に近付いて行くと、そこには絵ではなく、確かに1枚1枚の写真が貼られている。



「すごい…」



遠目では絵。


近くでは写真。


不思議だけどすごい。



「これ、彼に見せたい」



「カメラは?」



「あ、ないや。ちょっと携帯取ってくる。蛍はここにいて」



「あ……うん。分かった」



ユカと一緒に教室から出ようとも思った。


でもそうしなかったのはこの絵に心を打たれ引き留められたから。



一輪なのに凛と咲き誇る大きな赤い薔薇に。



「すごい…すごいよ、光」



薔薇は光のお姉ちゃんが好きだった花だよね。



光が提案したとは限らないけど、この薔薇を見て私はお姉ちゃんを思い出す。



光もきっと同じように思うよね。