そう佐藤先生が声を張ると拍手が起き、そして一番乗りの先輩たちから「指名ー!蛍ちゃん!」と声が掛かった。



それに続き「俺たちもー」という声が掛かり始める。



「と、とと当店、指名制度はございませんっ」



慌てて出て来た案内係がそう言っても先輩たちは引かない。



「蛍ちゃんを出さなければ帰るぞ、マジで」



「す、すみません。ですが、当店はチアか応援団か、そのどちらかしかお選び頂けませんのでその辺りをご了承願い…」



オドオドしながらも一歩も引かない案内係に睨みをきかす先輩。



それを見て大人気ないってみんな思っただろう。



ただ、誰も注意出来ないし、一歩も引かない先輩たちがいるこの状況はいただけない。



雰囲気の悪さに他の生徒がドン引きだ。



蛍を出してやればいいじゃねーか、という声がチラホラ聞こえてくる。



「なんかマズくね?」



山田の言う通りだ。


帰る生徒も出始めている。



「どうすんのかな?」



とりあえず様子を見るしかないんだけど、教室内を見渡す限り、蛍がいない。


何してるんだ?


学ラン着て接客するんじゃなかったのか?