「透子、幸せになれよ!
結婚、おめでとな!!」


「…ありがとうっ、太一くん!」





透子さんは涙を浮かべた瞳を細めて、満面の笑みを見せてくれた。



きっと会場の人たちや雷一さんを見る限り、太一は透子さんに告白したことを誰にも言っていなかったようだ。

だから会場の人たちも雷一さんも、不思議そうな顔で、太一と透子さんを見ている。




「太一くん。
そっちの方は彼女?」


「え?」




あたしを見た透子さんが会釈をしてきたので、あたしも返した。




「初めまして。
守屋(もりや)鈴といいます。

太一くんとは…友達、です」




彼女だって言ってホテルには入ったけど。

実際は彼女じゃないから。

友達ってことにしておいた。




「そうなの。
神庭…じゃなくて、光出透子です。

太一くんのこと、よろしくね」




にっこりあたしに笑って、透子さんは旦那様になる人の元へ戻って行く。





「…太一くんのこと、よろしくね……?」




はい?





「ちょっ、どういう意味ですか透子さん!
よろしくねってどういう意味ですか!?

あたし、太一の彼女じゃないんですけど!?」


「そうだよ透子!
よろしくねの意味、俺も知りてーよ!

俺はまだ独り身だぜ!?
透子にはこのちんちくりんがどう見えたんだ!?」


「ちんちくりん!?
酷くないその言い方は!

そっちの方がちんちくりんのお気楽でしょ!?」


「馬鹿に言われたくないね、馬鹿に!」


「何をぉー!?」





周りを気にせず始めた喧嘩に、会場は相変わらずしーんとした空気が流れていた。





あっ。

この会場入る前に、フロントで会った案内役のお兄さんに、「お静かに」って言われたんだ。

あたしたち、完全に守ってないね☆