「太一くん……」



透子さんが純白のウェディングドレスの裾を持ちながら走ってくる。




「来てくれたの……?」




太一の前で停まった透子さんが、目に涙を浮かべ始める。

美人だから、凄く絵になる。

純白のウェディングドレスも似合っているし。



「当たり前だろ…?
透子の兄貴の、結婚式なんだから…。

兄貴の弟で、透子の幼馴染で生徒の俺が来なくて、どうするの!」




ヘラヘラッと笑う太一だけど。

その顔にはやっぱり少し、寂しさが見えた気がした。




「ごめんね…太一くん……」


「謝るなって透子。
俺は俺の気持ち伝えられたから、後悔してねーよ。

しかも、兄貴には勝てねーよ」


「太一くんは、雷一くんと違うよ…?」


「そういう勝てねーじゃねーよ!

透子が引っ越し先で辛かった時、俺は何もしてやれなかった。
だけど兄貴は、ずっと透子のこと支えてやっていた。
その時点で俺は兄貴に敵わねぇよ。

兄貴は絶対に透子を幸せにする。
俺が保証してやるよ!」






好きな人が兄と結婚してしまう。

凄く辛いことのはずなのに。




太一はあんなにも笑顔だ。

ふたりで座った砂浜で見た、あの夕方の太陽のように。