「みかん食べながら歩いているとき、看板あったの気が付かなかった?」


「看板……?」


「そう。
ここから海近いよって看板」


「あったの!?
全然気が付かなかった……」


「海行きたくなったから来たんだ。
でも来てみて正解!

夏だけど誰もいねーし。
俺らの貸し切り状態じゃん!」


「夕方だからね。
もうそろそろ皆帰る時間なのかな?」




と言っても、サーフィンする人もいない。

あたしたちの貸し切り状態だ。




「俺海はいるけど、スズは?」


「あたしは…手だけ!」




鞄を砂浜に置いたあたしたちは、波打ち際へ向かって行く。

そこで太一は靴と靴下を脱いで、海の浅い場所へはいっていく。

あたしはしゃがみ込んで、海の中に手を突っ込んだ。




「「冷たーい!」」


「…………」


「…………」


「「……プッ」」




あたしたちは一緒に吹きだし、笑いだした。