「え?陸斗くんが手当してくれるの?」
あたしは驚きで動揺を隠せない。でも素直にうれしかった。
だって、入学して隣の席になってから、話しかけても冷たいし。ほとんど無視されるし。
せっかく隣同士の席になったんだし、仲良くなりたいのに。
陸斗くんとの距離は、全然縮まらなくて。
だけど、いまこうして。あたしのケガの手当てをしてくれている。
奇跡が起きた……。
イスに座っているあたしと、床にしゃがみ込んであたしの手当をしてくれている陸斗くん。
「ごめんね、陸斗くん……手当してもらっちゃって……」
「どーせ……いつもの調子でバカみたいに、はしゃいでたんだろ?」
ボソッと言った陸斗くんの言葉は冷たく聞こえても。
あたしの指に触れる彼の手は、温かくて優しい。
下を向いている陸斗くんの姿を見つめる。
なんで……こんなに胸が締め付けられるんだろう。
ぎゅって、苦しい……。
顔をあげた彼は、まっすぐな瞳であたしの顔を見る。
「しばらくは、おとなしくしてることだな」
「うんっ。ありがとぉ」
あたしが満面の笑みを見せると、彼はあきれたようにフッと笑いをこぼした。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)