授業中というのもあって誰もいない静かな廊下を、あたしは歩いていく。
保健室の前にやってきて、閉まっているドアを開けようとしたそのとき。
いきなりドアが開いた。
――ガラガラ……ドンッ。
あたしとは逆に、保健室を出ようとした誰かと勢い良くぶつかった。
「わっ」
かたい感触があたしの顔に広がり、胸元の白いシャツとネクタイが目に飛び込んで来た。
「ごめん……なさい」
そう言ってあたしは、少しジンジンする顔を上にあげた。
「わりぃ」
頭の上から降ってきた言葉。その声の主は、彼だった。
「陸斗くんっ」
体育の時間なのに、制服姿のままの彼。
「また保健室で寝てたの?体育の時間、いっつもサボってるよねー。ふふっ。イケナイ子~」
「……おまえは?」
彼は無表情のまま、あたしに聞く。
「あ、あたし?バレーでつき指しちゃって。ほら見てよぉ」
あたしは彼につき指した手を見せる。
「湿布貼らないとねーっ」
そう言いながら笑顔で陸斗くんを見たあたしは、彼の横から保健室の中へ入った。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)