◆彩葉side◆



――4月上旬。



この町から見える遠くの山々も、上のほうにはまだ白い雪が積もっている。



あたしが生まれ育ったのは、豊かな自然が残る田舎町。



自宅を出て、田んぼのあぜ道を歩いていく。



期待とほんの少しの不安が入り混じる中、抜けるような青空に向かって笑顔で大きく息を吐き出した。



「きれいな空だな……」



今日は高校の入学式。



自宅から高校までは、徒歩で30分かからないほどの距離。



「ヤバッ。急がないとっ」



腕時計で時間を確認したあと、あたしは走り出した。



川の流れる橋の近く、桜の木から薄ピンク色の花びらがヒラヒラと風に乗って宙を舞っている。



――ザッ。



「ぎゃあっ」



――ドサッ。



橋のアスファルトの上で、うつぶせに倒れ込んだ。



あたしは昔から、よく転ぶ。



何かにつまづくこともあれば、何もないところでも転ぶ。



……イタタ。



高校生活初日から派手に転ぶなんて。



誰も見てないとはいえ、恥ずかしすぎて、うつぶせに倒れ込んだまま動けずにいる。



「……大丈夫?」