放課後、あたしは今日も図書室にいる陸斗くんの帰りを待っていた。
朝は晴れていたのに、頭上には、どこまでも重たい灰色の雲が広がっている。
誰もいない昇降口に立っていると、大粒の雨がポツポツと降りだしてきた。
いつも座って待っている昇降口の階段の頭上には、屋根がない。
雨に濡れないよう屋根のある階段手前のスペースで、壁にもたれかかり立っていた。
雨足がどんどん強くなっていく。
「どうしよ……」
通り雨ではなさそうな雰囲気だった。
「傘持ってきてないのに……」
しばらくして雨足は少し弱まったけれど、一向に降り止む気配を見せないシトシトと降る雨。
「陸斗くんが来るまでには、止むかなぁ」
雨の匂い。
雨に濡れた草の匂い。
雨の音を聞きながら、目を閉じる。
雨の音は、心がスッと落ちつくような気がする。
「傘持ってねぇの?」
その声にパチッと目を開けた。