「じゃあ……気をつけて帰るんだぞ?」 「うん」 無理やり笑ったことも、気づいて欲しくて。 「じゃーな」 「うん、バイバイ」 お互いに手を振ったあと、それぞれ歩き出した。 途中で振り返って、田んぼ道を歩いて帰っていく夏樹の後ろ姿を見つめた。 きっと、振り返ったのも私だけなんだろう。 いつもと違う私に気づいてもらえるのを、心のどこかで。 最後まで期待してたんだ――。