ひまわりの迷路の中を、男の子はあたしをおぶって歩いていく。
『パパとママ心配してるかな……。あなたはひとりで来たの?』
『いや、友達と』
『え?友達は?』
『迷路の入口って3つあったじゃん?それぞれひとりずつ別の入口から入って、誰がいちばん最初にゴールするか競争してんだよ』
『そうだったんだ……あたしのせいでビリになっちゃうよね?』
『だろうな』
『ホント、ごめーんっ!うっ……ううっ……』
『いいから泣くなって。泣き虫だなぁー、おまえは』
『グスンッ。ごめんなさい……』
さっきからずっと。
――トクン、トクン。
鳴り止むことのない胸の音。
その音が聞こえてしまわないか心配で、あたしは時々、大きく深呼吸をした。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)