夏樹は自分のロッカーに行き、教科書を持ってきてくれた。
「はいよっ」
いつもと変わらない夏樹の笑顔。
いまは真っ直ぐ見れなかった。
「あ、ありがと……」
私は少しうつむいて教科書を受け取る。
「あのさ、夏樹……」
「ん?」
素直に聞けたらいいのに。
“いま彩葉ちゃんと何話してたの?”
そう聞けたら、この胸の痛みも少しはラクになるのかな。
「ううん……なんでもない。じゃ行くね」
「おうっ」
夏樹は先に教室の中へと戻っていった。
その場に立ち止まったままの私は、夏樹の姿を見つめる。
教室に戻った夏樹の周りには、男子や女子がすぐに集まってきた。
中学の頃は、私もその中にいたのに。
隣のクラスっていうだけで。
こんなに遠く、遠く感じる。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)