窓から入ることを断念したコウちゃんは玄関へと回った。そのまま二階のヨシ兄の部屋に行くのかと思ったら、わざわざリビングに戻ってきて私の向かいに座り込む。

百八十センチ超の大きな体のコウちゃんが遠慮がちに身を屈めて、ちょこんと座ったのがおかしくて笑ってしまう。



「何がおかしいんだよ」

「だって、今さら遠慮してるんだもん」

「他人(ひと)んち来たら俺だって遠慮するよ」

「遠慮って今さら……」

「うるせーよ」



コウちゃんが照れ臭そうに口を尖らせる。
顔がほんのりと赤くなってるのに気づいたら、余計におかしくて笑いが止まらない。



コウちゃんはヨシ兄の幼馴染みでもあり、私の幼馴染み。ずっと幼い頃からよく知ってるし、お互いの家を自分の家みたいに出入りしてた。今さら遠慮なんて口に出すなんて。

さっきだって、リビングの窓から入ってこようとしたくせに。



「ヨシはいつから寝てんの?」

「お母さんが買い物に行く前かな? 部屋覗いたら寝てたんだって」

「そっかぁ……」



大きく息を吐きつつ、コウちゃんが天井を仰ぐ。喉が露わになって、体がゆっくりと後ろへと傾いていく。倒れたのかと思ったら、両腕を床について頭だけ起こした。