描きかけの星天


「しゃーないなあ……、手ぇ挙げろ」

「手? だから、無理ってば……」

「ちゃう、両手挙げて」

「へ? 両手?」

「そう、バンザイのポーズ、せーの」



バンザーイ? 

疑問を感じながらも、心の中で唱えて両手を挙げた。



コウちゃんに手首を掴まれたと思ったら、急に体が軽くなる。両足がふわりと地面から離れて、宙に浮いた体が防波堤の上へ。



思わず膝を曲げたら、片っぽの足からサンダルが脱げ落ちた。



だけどサンダルの行方を追って、防波堤の下を見ることはできない。
高い所は苦手だから。



頭の中は、落ちたサンダルのことでいっぱい。

目の前に迫ってるコウちゃんの顔も、バンザイしたままコウちゃんにぶら下がってる自分の変な格好さえも気にならない。



「足、着けてみ」



不自然に浮かせた両足をそっと下ろしていく。
コウちゃんの手が腰へと回されて、体を支えていてくれるから怖くない。

いつの間にかバンザイしていた腕はコウちゃんの肩に乗っかって、まるで抱っこしてもらってるみたい。



「あっつぅ……」



サンダルの脱げた足の裏に、防波堤の天辺が触れた途端に跳ね上がる。