ああ、そうか。
そういうことだったんだ。
ずいぶん前に、江里から彼のことを好きだと相談されたことはあった。
だけど引っ込み思案な江里が、私に何にも言わず彼に告白するとは思えない。
きっと彼の方から江里を誘ったのかもしれない。
いつ……?
江里には何と言ったんだろう。
いろんな想像を巡らせているうちに、複雑な気持ちが胸の中で膨らんでいく。
だって急用ができたから一緒に行けないって言ってたけれど、嘘をつかなくても正直に話してくれたらよかったのに。
「涼子? どうした?」
コウちゃんが私に肩を並べて、顔を近づけてきた。
私の視線を辿っている間に、江里と彼は雑踏の波とともにショッピングモールの方へと向かっていく。
「うん、友達に似てる子がいたけど見間違いだったみたい」
遠く小さくなっていく二人を見送りながら返すと、コウちゃんは首を傾げて頭を掻いた。

