描きかけの星天


マンションの駐車場の向こうは海、何も遮るものがないから花火を観るには絶好のロケーション。花火大会の日だけは、マンションに住んでる人たちが羨ましいとずっと前から思っていた。

両親に聞いた話によるとマンションが建つ以前、この辺り一帯には大型レジャーパークがあったんだとか。



「どうやって入るの? 勝手に入ったら不法進入だよ?」

「それが入れるんだよ、入れるようになった……と言った方がいいのかな?」

「なにそれ?」



追求したいと思ったのに、信号が青に変わる。



コウちゃんが目で合図したように思えて、うんと力いっぱいペダルを踏み込んだ。信号待ちをしている集団から飛び出して、一気に加速する。

不思議とワンピースの裾なんて、気にしているほどまくし上がっていない。



コウちゃんとは前輪の差、あと少しで横に並びそうなのになかなか並べない。競っているつもりはないと言い聞かせてるけれど、やっぱり負けたくない。



ちらりと振り向いたコウちゃんは勝者の笑み。
ヨシ兄ほど嫌な笑顔ではないから許すけど。



やがて前を走っている集団に追いついてしまって、ゲームセット。