描きかけの星天


はあ、と吐いた息は悔しさでいっぱい。



「コウちゃんがお兄(にい)ならよかった」



ぽろっと溢れた言葉は半ば本心。

ヨシ兄よりもコウちゃんの方が面倒見がいいし、細かい気遣いができる。体格だって、ヨシ兄よりも筋肉のつき方が綺麗だし。



こんなこと言ったら笑い飛ばされる、と思っていたらコウちゃんは思いもしなかった険しい横顔。



「いや、無理。涼子の兄貴なんて遠慮しとく」



私の顔も見ないで言われてしまった。
期待していたコウちゃんにまで否定されたら、ちょっと傷つく。



「あーあ、コウちゃんも冷たいなあ……」



笑い飛ばしたけどすっきりしない。



「兄貴って……なあ? たぶんいいことないと思うんだ、ほら、俺の兄貴も年上だから……って何かと言われてるし」



今さらフォローのつもりなのか、やたらとお喋りになるコウちゃんがますます怪しい。
しかも焦ってるのが、ありありと顔に現れてる。



「もういいよ、それよりどこで観るの?」



気を取り直して問いかけた。
何にも考えないで自転車を漕いできたけれど、わかっているのは花火を観るという目的だけ。