「あっ、つぅ……」


思わず声が漏れた。

弾かれるように手を離した下には、窓から差し込む強烈な陽射しに焼かれたフローリング。座ったまま上体を後ろへ傾けて、レースのカーテンを掴んで隙間を隠す。



カーテン越しとはいえ陽射しはノースリーブのワンピースの剥き出しになった肩に突き刺さって痛い。



もうワンピースなんて着てる必要もない。
早く着替えてしまおうかしら。

い草のカーペットに着いた手のひらに湿っぽさを感じながら体を起こした。こちらへと向いた扇風機の生温かい風が髪を巻き上げる。




耳鳴りのように絶え間なく響く蝉の声は、暑さを倍増させるみたいで腹立たしい。ヤツらは私をバカにしようとして、我が家の周りばかりに集まってるんじゃないか。



「もう、あっついなぁ……」



声に出すと余計に暑くなるのに。
座卓に広げたノートを見下ろして、ひとつ息を吐いた。



ノートはほとんど白地に近く、たった数行の文字はいつ書いたのか覚えはない。さっきからノートの景色は全然変わっていないと思う。