「ん…………」

瞼の裏から明るい明かりが差し込んでくる


「うーん」

私が背伸びをすると近くで声がした

「おい、起きたぜこいつ」

まだ、ボーッとする頭で 目で

何がどうなっているのかを考える

目の前に三人の男

見たことの無い粗末な部屋

知らない匂い。

「こ、ここは?」

なんとか声を絞り出して聞く。

「おはよ、ここは新選組、君は僕達の屯所の前で倒れてた」

にこにこと胡散臭い笑顔で一人が言った

「倒れてた?」

「総司 その話は副長達が来てからにしよう。平助が呼びに行った」

もう一人の男が落ち着いていった。

すると、そのすぐ後にふすまが開いて
眩しい光が差し込み目を薄めた。


「やっと起きたか、小僧。」


長髪の、目のつり上がった男が私に、言った。


そうして、部屋に入ってきて私の寝ている
布団の隣にドカッと座った。

「やぁ、おはよう。突然のことで頭が混乱しているかもしれんが、私達の質問に答えてくれるかい?」

もう一人の優しそうな大男が、優しく聞いてきた。

「…………………あなた達は……」

「おぉ!これは、失礼した。まだ、名乗っていなかったね。私は近藤。そしてここは、新選組屯所だ。」

「新選組…………」

「訳がわかろーとわかるまいと質問には
答えてもらう。お前門の前で何をしていた
何故門の前で倒れてたんだ。」

目のつり上がった男が言ってきた。

「……そんなこと……いわれても。私はただ
走ってて気づいたら意識がなくなってて…」

ほんとにそうなのだ。別に新選組の前だから倒れたわけではない。

そこになんの意味もないのだ。

「何故走ってたんだ?」

あいも変わらず厳しい口調で釣り目の男が
迫ってきた。

「まぁまぁトシ。そんなにつっかかっていっては相手も恐れて何も言えまい。」

穏やかそうな男が釣り目の男をトシと呼んだ。 

「近藤さん!甘やかすとつけあがるんだよ
こう言うのは!」

‘‘トシ’’が、優しそうな男を近藤さんとよんだ

「きみ、名前を教えてくれるかい?」

近藤さんが優しく聞いてきた。


「紫月。………紫の月 で紫月。」

「紫月君か。うん、いい名だ。では、紫月君。君は何者だい?」

「……………江戸から走って山へ向かった。
山に入ると道に迷った。寺があったから少し聞いた 京へはどうやっていくのかって
そうして。教えてもらった方向にずっと走り続けてた。」

「そうなのか。何故江戸から遥々京まで?とても、走ってこれるような距離ではないだろうに」

それでも走ったのだ。

なりふり構わずに。

「…………江戸には、私を縛り付ける物が余りにも多すぎたから。」

私は誰にも聞こえないような声で囁いた。

「ん?何か言いました?」

はじめからこの部屋にいた総司と言われた男が私をのぞき込んできた。

「い、いえ。そんなことは…」

私はうつむきながら答えた。

「…おいっ!いつまでたっても話が進まねーじゃないか!! いいか小僧。お前は何者で、何故ここにいるのか答えろ!」

トシが怒鳴った。

「いや、だから何者と聞かれても…」

こいつめんどくせーなーって思わずにはいられなくて、なんて言い訳しよーか迷っている。

「ただの農民だし…なんでここにいたかなんて、たまたまここで倒れたからだし…」っと言ってぶすっとするとトシはギロリと睨んできて生きた心地がしなかった。

「そうか、まあいい。しばらくはここでおとなしく捕らえられてろ。」って言われてびっくり。

「え、返してくれないの!!なんで!?」

全部話したじゃんか、(嘘だけど)え、嘘ってバレてるとか?イヤイヤな訳無しでしょ