【短編】脇役少女は時を舞う

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「ただいま、音」

「平助くんっ……!!」

御陵衛士として戦いに赴いた平助くんが、息を切らして戸口に姿を現した。

歴史上、油小路事件で平助くんは亡くなっていたはずだったのだ。

必ず帰ってくるから、そう言い残したものの。
不安で不安で仕方がなかった。

ただたた平助くんが予め用意してくれた山奥の隠れ家で『藤堂平助生存説』を祈ることしか。

思わず飛び付いて、ついでに涙までが溢れた。


「お帰りなさいっ…」

平助くんが私の背をよしよしと撫でる。

「必ず帰ってくるって言っただろ。…なんて大口叩けるのも近藤さんたちのお蔭なんだよ」

「え?」

思想の違いから新選組、そして近藤さんから半年以上も前に離れたはずなのに。

「『絶対に北沢くんを一人にするんじゃないぞ』ってな。……俺は、あの人を裏切ったのに」

平助くんが辛そうに顔をしかめる。彼も新選組を愛していた者の一人だった。

「平助くん」

ぎゅうっと平助くん──否、夫を強く抱き締める。

「絶対に離さない。これからも、幸せにしてみせるから」

皆との約束だしな、と笑った。

「まぁでも手前上無傷じゃいられなかったけどなー」

ふっと腕が離れ、平助くんが頭の包帯を取る。

前髪で隠れていたが、致命傷ではない限りの切り傷が額にあった。

「わわっ、ごめん!!」


慌てて手当てをしようと台所へ向かうと、



───また、腕を引かれた。