【短編】脇役少女は時を舞う

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ピッピッという音で目が覚めた。

「紗菜っ!」

「お母、さん…」

どうやら病室みたいだ。白い天井。

お母さんの涙があたしの顔にかかる。

「音、は…」

反射のようにあたしの口が動いた。

「音?音って……?」

お母さんが不思議そうに首を傾げる。

あれ…そういえば音って誰だろう。


「ううん、何でもない……」


何だろう。


あれは、あたしの、すごく大事な────。


「あんた道路で車にぶつかりそうになってね。何か誰かが突き飛ばして助けてくれたみたいなんだけど、それは分からないの。おかげで頭打っただけで済んだんだけど」



誰、なんだろう。


『紗菜』







妙に鮮明に覚えているその声の主を、あたしは思い出せないままだった。