勇者様と恋人宣言―アラサー勇者は恋がしたい―



「大丈夫よ。あれは二日酔いじゃなくて、完璧に酔っぱらってて、あんたがドラゴンに見えたからやったことなのよ。
今日はよく見えてるから大丈夫」


「大丈夫じゃない! 今日は杖を忘れてるだろうが」


「あら? 本当だ! でも大丈夫よ。杖がなくても魔法出せるから。私、天才なのよ」


「だーめーだ!」
ヴィクトールはぶちギレ寸前だった。剣を抜いて、今にも切りかかる勢いだった。


「ヴィクトール、ちゃんと言っちゃいなさいよ。おれはおまえが心配なんだーって」
イレーネがちゃちゃを入れる。


「ちがっ!」


「そっか、ヴィクトールは心配症なんだ。ごめん、ごめん。でも、私、天才だから大丈夫!」
私は豊かな胸をこれでもかというぐらい張った。


「だから! 俺はっ……!」
ヴィクトールの顔は真っ赤だった。熱いのか?



「お前ら! 何やってるんだ!」
不意に向こうの方から声が聞こえた。


やばい! 部隊長に怒られる!

私は部隊長のお仕置きを思い出す。
一昨日はスクワット200回、腹筋300回、背筋300回、うさぎ跳で薪拾いだった。


血の気が引いていくのが分かった。